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日米両政府が都内で外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)と、米国の核戦力などで日本を防衛する「拡大抑止」に関する初の閣僚会合を開いた。
これらの会合は、4月の日米首脳会談で、同盟が地域の安保情勢の重要な変化に対応できるようにすると合意したことを受けて開かれた。同盟の抑止力、対処力を向上させ台湾有事などの戦争を防ごうというもので評価できる。
2プラス2は、基地の管理機能を専ら担ってきた在日米軍司令部を、作戦指揮権を持つ「統合軍司令部」へ再編成する方針を確認した。共同文書は中国外交について「他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序をつくり変えようとしている」と厳しく指摘した。
拡大抑止の閣僚会合は、中国の核戦力強化などが地域の安保環境を悪化させているという認識で一致し、拡大抑止強化を探求することで合意した。
拡大抑止の中心は核抑止である。自衛隊が非核の通常戦力を増やしても、核抑止が担保されていなければ役割を十分に果たすことは難しい。
これまで高官級だった日米の拡大抑止協議に、閣僚級の会合を加えたことは、中国、北朝鮮、ロシアという核保有国に日米の結束を示す効果がある。
ただし、核抑止をどのように強化していくかという具体論を示さなかったのは残念だ。
中国は核戦力を急速に増強している。北朝鮮は核の運搬手段であるミサイル戦力の強化に走っている。ウクライナを侵略するロシアはしばしば核恫喝(どうかつ)をしている。日本に脅威を及ぼす専制諸国家の核戦力が増強されているのに、日米は会議を開いているだけ、では心もとない。
日本が再び核攻撃されないことが何より重要だ。それは核廃絶を叫ぶだけでは実現しない。日米が合意したエスカレーション管理に加え、日本や近隣地域へ米国の核戦力を配置する必要はないのか。非核三原則見直しの議論も求められる。
在日米軍の「統合軍司令部」新設は、日本が今年度末に陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を置くことに対応するものだ。日本は独立国であり、自衛隊と米軍は独立した指揮系統で運用しつつ、連携を図ることが重要である。
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2024年7月30日付産経新聞【主張】を転載しています